山暮らしkikori塾 その1 イベントレポート

2022年7月16日~17日に「山暮らしkikori塾その1」が開催されました!
当日の様子をお届けします。

山のある暮らし

国土の約7割が森林におおわれる日本。
戦後の住宅需要の増加により、これからもっと木が必要になるだろうと思った
私たちの先祖は、子のため孫のために山にたくさんの木を植えました。

しかし生活スタイルの変化や、安価な外国産の木が入ってきたことなどにより、
間伐もされず放置された山が、今の日本にはたくさんあります。

山が手入れされなくなると、山の恵みも減り、
山と里の境(緩衝帯)がなくなることで獣害も増えています。
山が買われ、斜面一面ソーラーパネルになっている場所もあります。


自分たちの人生や暮らしを見つめなおし、
より自然によりそった暮らしをしたい。
今回の山暮らしkikori塾には、そんな共通の想いを持った関東および滋賀に住む男女6名が参加してくれました。

山を知り、木を知り、山仕事を知る

ナビが合っているか心配になるほど入り組んだ道の先にある今回の会場 ”モリモクショールーム”。
バスが遅れるというハプニングもありましたが、なんとか全員たどりつくことができました。

今回の「その1」は、山を知り、木を知り、山仕事を知ります。

まずは塾長 盛太志さんの案内で、モリモクショールームの裏山 ”ジョジョ二の森” を歩きました。

ちなみに「ジョジョニ」の由来は、「ユックリとジョジョニ」という絵本から。


参加者の中には登山が趣味の方もいましたが、きこりとして山を見ると、また見え方が違ってきます。

たとえば「尾根松、沢杉、腹檜」といわれる、と塾長が教えてくれました。

山のてっぺんの尾根には松が、沢の近くには水が好きな杉が、中腹には檜が、
それぞれ生えやすいという植生を表しています。

他にも切り株を見て当時の伐採状況を説明してもらったり、地形や植生からそこに集まる動物の話をしてもらったり、それぞれ生えている植物の説明をしてもらいました。

この木の名前は「アブラチャン」。クロモジの仲間で、精油がとれるそう。

山を下りたところで、ちょうど雨が降ってきました。
晴天率の高いこの伊那谷地域ですが、今回の山暮らしkikori塾では小雨が降る中、
山歩きや山での伐採のタイミングでは晴れるという、不幸中の幸いのようなお天気でした。

次に、山仕事に必要な道具を学びます。

チェーンソーという便利な道具ももちろん必要ですが、昔から使われている道具には
山の作業をする上で欠かせないものも多くあります。
現在の林業の中には、大型機械ですべて賄ってしまうこともありますが、
山暮らしをしながら自分で木を伐るには、そういった道具も必要です

さて、いよいよチェーンソーに触れます。
まずはチェーンソーの構造とメンテナンス方法をみっちり学びました。


ただ木を伐れるようになるだけでなく、参加者のみなさんがこれから
自分でチェーンソーを持って山暮らしを実現していくために、重要なポイントです。

みんさん真剣なまなざし
講師のひとり、安達さん

チェーンソーの歯を研ぐことを”目立て”と言いますが、目立てが何より重要だ、と塾長は話します。
「泣くほど研いで笑うほど切れる」ことを目指して、
実際の林業の現場では、休憩の度にみなさん目立てをおこなうそうです。
やすりで歯を研ぐという一見地味な作業ですが、塾長の話しの熱から、
とても奥が深く重要な作業であることが伝わってきました。

いよいよチェーンソーを回して木を切っていきます。

林業は危険を伴う職業。事故率は全産業の平均より12倍高いとされます。
安全に切るための服装や、操作上の注意、体の動かし方などもきちんとレクチャーした上で、
ゆっくりと説明をしながら、参加者一人一人が玉切りと、受け口の練習をしていきました。

ヘルメット、チェーンソーパンツなど、きちんとした服装で臨みます。
キックバックで跳ね返った時に歯が止まるように、ロックがついています。

さて、あっという間に次の日に。

翌日は朝から山に入り、昨日習ったことを森の中で実践します。

練習の時とは違い、山の中。
比較的角度のない平らな場所でしたが、それでも雨上がりの森はぬかるんで足場が悪く、
落ちている木や枝が邪魔で伐るのは難しそうでした。

玉切りは、木の引っかかりや木が動く方向を見ながら切らないとチェーンソーのバーが挟まれてしまいます。
熟練のきこりでも判断が難しい作業。しっかり観察しながら行いました。

切るのが上手な職人ふたり。切った木はこのあとの薪割り用に下まで運びます。本来なら玉切りせずに長いまま搬出するそうです。

お昼ご飯の後は薪割りです。
薪も用途によって長さなどが違いますが、今回は一般的な薪ストーブを想定して、40cmの薪をつくりました。
今回は杉のみでしたが、木の種類によっても割れやすさが違ったり、節をうまく避けながら割ったりと、薪割りも奥が深いそう。

盛木材には大きな炭窯があり、炭焼きもしていますが、炭の場合はもっと長い薪を使用するそうです。
ちなみに山暮らしkikori塾が開催されたここ長野県伊那市では薪ストーブの導入が盛んで、薪ストーブ屋さんも多いです。地域材の薪の流通などもしている会社もあり、割られた薪を買うこともできますが、地区で間伐される木をただでもらってきて自分で玉切りや薪割をすると、燃料代が抑えられます。

自分で木を伐り、薪を作り、薪ストーブで暖をとる。
塾長の話を聞きながら、参加者のみなさんはそんな理想の山暮らしを想像したのではないかと思います。

最後は、2日間お世話になったチェーンソーのメンテナンス。
長く使い続けるためにも、使った後は毎回掃除と目立てを行うことが大事です。
短い時間使っただけでも木くずで汚れ、新品だったチェーンソーもいい感じに風格が出てきました。


今後も使い続けながらメンテナンスをおこない、毎回のkikori塾で活躍してもらいたいと思います。

まとめ

参加者の多くが、現在の暮らしや社会の在り方に疑問を持ち、
もっと自然に寄り添った生活をしたい、という想いを持っていました。

山の中にある、今まで知らなかった豊かな暮らし。
同時にスローライフとは程遠い山暮らしならではの大変さも感じられたのではないかと思います。

自分にとっての理想の暮らしとは?
そんなことも考えるきっかけとなる第一回目となりました。

kikori塾は1年間のプログラムなので、最後にみなさんに「1年後の暮らし」というテーマで
目標を書いていただきました。
残り3回のプログラムでも、いろいろな学びや出会いを通して、
参加者のみなさんがそれぞれ目標に向かっていくことをサポートしていきたいと思います。

さて次回は3か月後の10月。
いよいよ立ち木を伐採します!

みなさん楽しめましたか?次回もお楽しみに! by 盛テン